【レポート】通訳案内士 一次試験(英語)~4回目でつかんだ合格までの道のり

通訳案内士試験は、語学力に加えて、日本に関する幅広い知識と実務的な理解を問われる、まさに総合力が試される国家試験です。一次試験は5科目あり、すべての科目を合格しないと二次試験に進めない仕組みになっています。2017年から受験を始めた私は、4回目の挑戦でようやく一次試験を突破しました。この長い道のりを振り返りながら、各科目での対策と失敗から得た学びを、これから受験を考えている方々にシェアしたいと思います。
目次
通訳案内士試験 一次試験の概要
通訳案内士試験の一次試験は、以下の5科目で構成されています。
- 外国語(英語など):100点満点、60分(英語の場合)
- 日本地理:100点満点、40分
- 日本歴史:100点満点、40分
- 一般常識:50点満点、20分
- 通訳案内の実務:50点満点、20分
合格基準は、原則として各科目で60%以上の得点です。ただし、年度によっては補正が入ることもあります。語学(英語)はTOEICなどで免除可能、また地理・歴史・一般常識はセンター試験(現在の共通テスト)で一定点数を取ることで免除されます。
すべての科目で合格しないと、次の二次試験(口述試験)には進めません。ただ、一度合格した科目については、翌年の試験に限り試験が免除されます。これにより、複数年にわたって計画的に合格を目指すことも可能です。
計画性が全くなかった私の場合…
通訳案内士試験は、5科目そろって合格しないと二次試験に進めないことはわかっていたものの、私の場合、一発合格を狙うほどの気合はなく、特にスクールに行くわけでもなくで、のんびりと4年もかかってしまいました。
受験年 | 合格した科目の数 | 合格した科目( *は免除科目) |
2017年 | 1科目 | 英語* |
2018年 | 3科目 | 英語*、一般常識、通訳案内の実務 |
2019年 | 4科目 | 英語*、地理、一般常識*、通訳案内の実務* |
2020年 | 5科目 | 英語、地理*、歴史*、一般常識、通訳案内の実務 |
次からはそれぞれの教科ごとに、4年を振り返ります。
1. 英語
2017年、2018年、2019年の英語試験はTOEICスコアで免除になりました(免除条件は当時900点以上)。ただ、TOEICスコアの免除は、スコア獲得から2年間の期限付きということで、2020年も免除狙いで春にTOEICを申し込んでいたのですが、新型コロナの影響で急遽中止に。やむなく本試験での英語試験を受けることになりました。
4回目の受験ながら、初めての英語試験だったので、受験前の対策として、まず過去4年間の過去問をすべて解き、出題傾向をつかむことに集中。英語力のベースがあったとはいえ、記述問題や語彙のレベルに最初は戸惑いました。けれど、繰り返し過去問を解いていくうちにパターンが見え、結果的に100点満点中92点を取ることができました。
TOEICの実施が突然中止、さらに再開時期も不明の事態なんて、そうそうないと思うのですが、万一に備えて本試験の問題に慣れておくことも大切かもしれません。
2. 日本地理
2017年と2018年は不合格、2019年に初の合格!なので翌2020年は免除対象となりました。
地理の試験対策で効果的だったのは、地図帳と都道府県別の地図帳をフル活用すること。山や川、湖、半島、温泉地、世界遺産、国立公園などを自分の手で書き込むことで、視覚的にも記憶に残りやすくなりました。
試験当日には、書き込みいっぱいの地図帳を持参し、控室で最後の確認。直前まで見直せる安心感と、自分で作った教材という誇りが、精神面でも大きな支えになりました。
“書いて覚える”は地理において最強の手段。自作の地図帳は今も捨てられません!
3. 日本歴史(不合格→不合格→不合格→免除)
歴史は何度も足を引っ張ってきた難敵でした。2017年、2018年は勉強不足で撃沈。
勉強不足を反省して、勉強時間を増やし懸命に頑張って準備した2019年の試験では難問に苦しみ、またまた不合格。勉強量を増やすのではなく、根本的な対策の見直しが必要だと痛感。教科書にものっていないマニアックな難問が出る試験よりも、教科書をきちんと勉強したら一定の点がとれる大学入学共通テストを目指すことにしました。
2019年の試験の自己採点をして不合格がわかった後、すぐに、2020年1月に行われる大学入学共通テストの日本史を申込み、受験しました。結果は….68点とギリギリでしたが、無事に免除の基準を突破できました。
余談ですが、この時の大学入学共通テストの受験会場でのこと。
自分の受験番号が指定された教室は、教室の外にまでガヤガヤが響くくらいにぎやかでした。でも、私がドアを開けた途端、そのガヤガヤは一瞬で「シーン」と静まり返りました。教室の中は、どこかの高校の制服を着た生徒たちが、休憩時間のように過ごしていたらしく、見知らぬ大人(私)の登場に戸惑いがあったようですが、数分でもとの騒がしさに戻りました。
「共通テストの直前って、最後の悪あがきでみんな本をにらめっことかじゃないっけ?」「なんで、私の受験番号が、同じ高校の生徒たちの中に横入りしたんだろう?」いろいろ考えを巡らせてもその答えは知る由もなく、「あの人、誰?」といった冷たい視線を浴びながら、ものすごくアウェーを感じたことも、今となってはいい思い出です(笑)。
4. 一般常識
この科目は予想外に難しいです。2017年は不合格でしたが、2018年に合格、2019年は免除でした。そして2020年、合格基準点ギリの30点で、なんとか合格に…!
受験勉強として、出題範囲の「観光白書」にマーカーを引きながら目を通していたのですが、本番では想定外の内容が次々と出題。「世界の外国旅行者数」や「1964年東京オリンピックの選手村の場所」など、準備不足が露呈しました。2018年に一度合格していたこともあり、やや油断があったのかもしれません。
“常識問題”とはいえ、勉強しないととれない科目です。逆に、侮らずにきちんと勉強すれば、合格は難しくないです。
5. 通訳案内の実務
2017年は不合格、2018年に合格していたものの、2020年は再受験が必要に。久しぶりに見ると記憶が薄れていたので、観光庁の公式テキストで復習。40点を取ることができました。
特に役立ったのは、過去問を繰り返し解いて形式に慣れることと、資料の根拠を自分なりにメモして理解を深めることでした。意外と細かいところまで問われるので、「流し読み」は通用しません。
この科目は、実際のガイド現場を想像しながら学ぶと、記憶が定着しやすいかも。
おわりに~4年の道のりのまとめ
私の一次試験合格への道のりをまとめます!
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | |
英語 | 免除(TOEIC) | 免除(TOEIC) | 免除(TOEIC) | 合格(92/100点) |
日本地理 | 不合格 | 不合格 | 合格 | 免除(前年合格) |
日本歴史 | 不合格 | 不合格 | 不合格 | 免除(共通テスト) |
一般常識 | 不合格 | 合格 | 免除(前年合格) | ギリ合格!(30/50点) |
通訳案内の実務 | 不合格 | 合格 | 免除(前年合格) | 合格(40/50点) |
振り返ってみても、私の場合、合格の道のりの難所は「歴史」でした。
2019年の3回目の試験で「日本歴史」が不合格だったことで、翌年の大学入学共通テストを受けることを決意したことが、転機だったと思います。
通訳案内士試験の一次は、道筋を立て、戦略を練り、一歩ずつ確実に進めば、必ず合格が近づきます。これから受験をされる皆さんに、私の経験が少しでもお役に立てば光栄です。自分に合った勉強スタイルを信じて、着実に歩みを進めてください。応援しています!
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